卵巣にできる充実性腫瘍は、良性・悪性のどちらであっても妊娠の妨げになります。ここでは、充実性腫瘍の症状や治療の現状に加えて、妊娠できかも一緒に紹介します。
充実性腫瘍はどんなものなの?
充実性腫瘍とは卵巣嚢腫の1種で、良性のぶよぶよした分泌物でできた腫瘍とは異なり、硬く細胞が異常に分裂してできている腫瘍のことを指します。
卵巣にできるほとんどの腫瘍が良性の分泌物からできた嚢胞性腫瘍であるのに対し、残りの1割がこの充実性腫瘍で、しこりのように硬いのが特徴です。この充実性腫瘍は悪性である可能性が極めて高いので、注意が必要な腫瘍です。
充実性腫瘍は症状から判断できるの?
基本的にこの充実性腫瘍でも、特に目立った症状がないことが多く、初期の場合は健康時と変わらず月経も来ることが多いです。
しかし、腫瘍が大きくなると、卵巣本来の機能が乱されたりして月経不順が起きたり、硬くなった腫瘍が皮膚の上から触っただけでもわかるようになる場合があります。
さらに、水がおなかに溜まる腹水などの症状が見られる場合もあります。充実性腫瘍にも中身があることが多く、全て固形である場合と、中には液体も混ざっていることがあります。
ですが、嚢胞性腫瘍と比べ少しでも充実性の固形の中身があった場合には悪性かどうかを判断し、急いで適切な処置をおこなわければいけません。
充実性腫瘍が多く発症するのは何歳頃?
充実性腫瘍は、ほとんどが「奇形腫」であり、年代としては10代~30代の若い世代に多くみられます。
充実性腫瘍の「奇形種」には良性(成熟奇形腫)と悪性(未熟奇形腫)がありますが、35歳以上になると、良性の奇形種腫瘍も悪性化がみられるので油断はできません。
そのため、35歳以上でこの充実性腫瘍の「奇形種」が発見された場合は早急に手術が行われます。
充実性腫瘍の治療法
充実性腫瘍の治療法は、基本的には手術です。そのうえ、卵巣内の溜まったものが悪性かどうかの判断も、まずは開腹または腹腔鏡手術をし、中身を出してみないことにはわかりません。
ですから、充実性腫瘍だと分かったら、大きさにかかわらず即手術をして腫瘍を摘出し、悪性でないかを調べてもらうようになります。
さらに液体でできた「卵巣嚢腫」が充実化している場合は、初期の卵巣がんが疑われます。いずれにしても悪性かどうかを、手術の最初に簡易的な病理診断で可能性を探りつつ、手術をする前に悪性だとわかればガン治療にそのまま移行する場合もあります。
悲しいことに、良性であっても卵巣と卵管を摘出することが一般的であり、悪性の場合は子宮も一緒に摘出します。残念ながら妊娠を望んでいた場合は、良性でも卵巣と卵管を摘出してしまうので、少なくとも片方の卵巣卵管を失うことになります。
場合によっては両方に発症している場合もあるので、その場合はどちらも失ってしまいます。さらに、悪性の場合にはどちらかの卵巣が健在であっても子宮を取り除くので、妊娠できなくなります。