妊娠出産で働きたくても退職することになったときに必ずしておきたい失業給付(失業手当)の手続き。出産後に就職活動開始で受給するためにしておきたい延長手続きや再就職を有利にする方法を中心に解説していきます。
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失業給付について知ろう
失業したらもらえる失業給付金。でも、このお金は職場を退職したら必ずもらえるものではなく、条件があります。
失業給付をもらえる条件
失業給付金をもらえる条件は、2つあります。
- 退職日前の2年間の間に雇用保険加入期間が12ヶ月以上ある
- 就職をする意思と能力があり、仕事をするために就職活動を行っている
この2つを満たしていなければいけません。
雇用保険に加入するのはこんな人
失業給付をもらうためには雇用保険に入っていなければいけません。雇用保険は、1週間に20時間以上、31日以上引き続いて働き続ける予定があれば、職場で必ず加入しなければいけないことになっています。
正社員・派遣・パート・アルバイトなどの勤務形態は関係ありません。1週間に20時間以上働き、31日間以上続けて雇用されているなら、雇用保険の対象です。
失業給付をもらえる期間と金額
失業給付金の受給期間(給付日数)は退職日の翌日から1年以内(90日~360日)です。再就職までの間支給されるものですから、給付期間が残っていても再就職した時点で給付が終了します。
職場を辞めることになった理由(会社都合か自己都合)によって、退職後すぐもらえるか3ヶ月の待機期間を経てもらえるか変わってきます。例えば会社が倒産した、臨時で雇用期間を決められていたなどの場合は退職後すぐもらえます。自分の都合で自分から会社を辞めた場合は、3ヶ月の待機期間ののちに給付開始となります。
もらえる金額は、働いていた期間と年齢によって異なります。
実は、妊娠での退職で失業給付はもらえない?!
妊娠をきっかけに退職した場合は、失業給付金をもらえる条件にあてはまりません。だって、妊娠で働けないから会社を辞めたのであって、すぐ就職活動をするというのは矛盾していますよね。
妊娠で働けなくなる前に自己都合で退職して3ヶ月の待機期間を経てから受給したとしても、それこそ妊娠後期で就職活動をして新しい職に就くことは難しいです。
なにより、出産後は56日間(8週間)仕事をすることが法律で禁止されています。そのため、出産により働く能力がないとみなされます。受給期間は退職日の翌日から1年以内ということもあり、出産で働く能力がないのに失業給付金をもらうことはできないんです。
それなのに、「妊娠退職で失業給付の手続きをしよう!」だなんてオカシイと感じますよね。実は、受給権の延長による救済措置を活用すれば出産後にもらえます。だから、「手続きしよう!」と紹介しています。
失業手当金の計算方法
失業手当金をいくらもらえるのか気になりますよね。そこでもらえる失業手当金の計算方法について紹介します。失業手当金の計算式は、次の式で算定されます。
基本手当金日額×給付日数=失業手当金
基本手当日額とは?
基本手当日額とは、退職した日の前6ヶ月の間に毎月支払われていた賃金の総額を180で割ったもの(賃金日額)に、給付率を掛け算したものです
賃金日額×給付率=基本手当日額
賃金日額には、残業手当・通勤手当・住宅手当も含まれます。退職金、ボーナス(賞与)や、結婚祝い金、慰金などの恩恵に係るお金は含まれません。
まずは、辞める(辞めた)日の6か月前にもらった給与やこれらの手当類を足して、180で割った数字(賃金日額)を次に紹介する式に当てはめると、基本手当日額が分かりますよ。
制度的に、すべての年齢と賃金日額をカバーしていてややこしいので、妊娠出産をきっかけに退職する女性の多くが当てはまる区分をピックアップしてまとめてみました。(平成27年8月1日から改訂されたものを利用して紹介しています)
すべての年齢と賃金を紹介したものはこちら:雇用保険の「基本手当日額」 – 厚生労働省
賃金日額が2,300~4,599円(主にパートさん)
賃金日額×80%
賃金日額が4,600~11,660円(主に常勤やパートさん)
((-3×賃金日額×賃金日額)+(70,280×賃金日額)÷70,600
※給付率は80~50%となります
【29歳以下】賃金日額が11,661~12,790円(主に常勤)
賃金日額×50%
【29歳以下】賃金日額が12,790円~(良いとこ勤めてますね!)
6,395円(上限額のため定額です)
【30~44歳】賃金日額が11,661~14,210円(主に常勤)
賃金日額×50%
【30~44歳】賃金日額が14,210円~(良いとこ勤めてますね!)
7,105円(上限額のため定額です)
実際の計算例
とても分かりにくいので、「自己都合の場合」の実例で計算してみましょう。
【勤続年数ごとの失業手当金の支給日数】
- 10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
勤続年数5年で賃金日額4,000円の場合
4,000円×0.8=3,200円
3,200円×90日=288,000円
となり、給付の総額は288,000円です。このように、給付率が定率もしくは定額なら計算はかんたん。問題は、給付率が変動する場合です。
4,600~11,660円帯は計算が面倒!
ここの計算がとても面倒!
勤続年数12年で賃金日額6,000円の人の場合で紹介します。
((-3 × 6,000円 × 6,000円) + (70,280 × 6,000円) ÷ 70,600 = 4,443円
4,443円×120日=533,160円
よって、総支給額は533,160円となります。
支給されないはずの失業給付は受給権の延長でもらえるようになる
さて、妊娠出産で退職する(した)なら、ここからが本題です。
妊娠、出産、育児をきっかけに退職した場合、失業給付金をもらえる条件にあてはまらないので退職後すぐにはもらえませんが、通常の受給期間(退職日の翌日から1年以内)を3年に延長することができ、元の1年分の受給期間と合わせると最長で4年間まで受給権を延長できます。
妊娠→出産→育児がひと段落して、「さぁ、仕事しよっ!」と準備が整うと求職活動ができますよね。この状態が「仕事をする意志、能力がある」と認められ、失業給付金をもらえる条件にあてはまります。
そしてありがたいことに、妊娠出産は自己都合退職なので本来なら3ヶ月の待機期間が必要だけど、この場合は待機期間なしで就職活動と同時に失業給付金の給付が始まるんです!
なので、受給権の延長申請は必ずしましょうね!
延長申請の受付期間に注意して!
しかし、気を付けなければならない点が1点だけあります。それは、失業給付金の受給期間を延長するためには、退職して31日目から1ヶ月以内に申請をしなければいけないということ。
退職して31日目からというのがポイントです。退職後すぐの申請ではないので忘れないようにしましょう。
申請に必要な物は、受給期間延長申請書、離職票、印鑑です。受給期間延長申請書はハローワークの窓口にあります。本人が申請に行けない時は代理人や郵送による申請も可能なので、自分で行けない可能性がある人は事前に管轄のハローワークにその申請方法について確認しておきましょう。
再就職が有利になる教育訓練給付制度
出産後に新たに就職先を見つけるのはなかなか大変です。子供をみてくれる人がいないとなると、保育園に預けることになるので勤務時間や日曜日祝日休みの制限をつけて仕事を探さなくてはいけません。
同じ職種に戻るならまだしも、別職種での再就職には無資格で仕事経験が少ないと就職には不利ですよね。
そこで活用したいのが教育訓練給付制度。教育訓練給付制度とは実費で受けた教育訓練講座を修了した場合、支払った受講経費の一部を雇用保険から支給してくれる制度のことです。
支給の対象者は初めての場合、雇用保険加入の期間が1年以上あり、仕事を辞めてから1年以内に受講を開始した人です。一般教育訓練と専門実践教育訓練に分けられ、対象となる講座は厚生労働省で決められたものに限ります。
一般教育訓練は医療事務、介護事務、調剤薬局事務などの事務業が代表的です。専門実践教育訓練は看護師、美容師、栄養士などの専門の資格取得が対象なので受講期間も長く、受講料も高くなるので子育てしながらとなると難しいのが実情です。
教育訓練給付制度の金額や対象期間など
一般教育訓練の給付金額は受講料の20%が支給され、上限は1年で10万円までです。専門訓練で支給される金額は受講料の40%の額、最高で1年間に32万円で3年分までです。
医療系の事務の仕事は土日休みのところが多く、勤務時間帯も日勤帯の場合が多いので小さな子供がいるママ達にとても人気があります。
無資格で仕事経験が少ない人は、医療系の事務の講座を受講して「診療報酬請求事務能力認定試験」に挑戦して資格をとれば就職に有利だと思いますよ。通信教育もあるので手軽に始められますしね。こちらも妊娠、出産、育児が理由であれば、申請することで3年間の延長(計4年間)をすることができますよ。
出産後の就活のために上手に活用しよう!
産後の生活のためにも、失業給付金をもらいながら就活できたら家計がとても助かりますよね。退職してから1ヶ月後に忘れずに受給権の延長の手続きを行いましょう!
教育訓練給付制度についても興味がある人は、妊娠中に教育訓練講座の資料を集めて情報を収集して、ぜひ活用してみてくださいね!