出産手当金※社会保険でもらえる手当。勤務形態などで金額が変わる

何かとお金がかかる出産。それなのに、予定日真近は会社を休まなくちゃいけなくなるので生活費も心配になりますよね。働く女性が出産でもらえる代表的な手当の出産手当金について、わかりやすくまとめました。

出産手当金とは

出産手当金とは簡単にいえば産休中にもらえるお金のことです。このお金は社会保険を管理する全国健康保険協会から支給され、産休中に給料を支払われない人のために、その間の生活費を保証して不安を取り除き、安心してしっかり体を休ませることを目的とした手当です。

この全国健康保険協会は国ではなく、民間で運営する組織です。平成20年9月までは国の社会保険庁で管理していましたが、平成20年10月から変わっています。まず産休の期間が法律でちゃんと決まっているので、きちんと把握しておきましょう。

産休の期間は、出産予定日の42日前(6週間)から出産した日の翌日から56日(8週間)です。産休の働かない間、標準報酬日額の給料の3分の2にあたる金額を産休の期間の日数分もらえます。それが出産手当金制度です。

補足ですが、産前の休みについては絶対休まなければいけないという規定はなく、希望すれば休めます。産後については産後56日(8週間)は働かせてはいけないと法律で決まっています。医師の許可をもらい申請すれば、42日間(6週間)から働くことも可能ではありますが。お腹の赤ちゃんのために産前も仕事を休んで、ゆったりした気持ちで出産に望みたいですね。

出産手当金の受給資格と金額や計算方法

出産手当金、もらえたらありがたいですよね。でも自分がもらえる資格があるのか、もらえる金額はどれくらいか、もらえる金額の決め方、計算方法・・・などなど疑問もたくさんあると思います。その疑問について1つ1つ解決していきます。

出産手当金の受給資格

出産手当金の受給資格は、社会保険を収めている被保険者本人です。これは正社員、派遣、契約社員、パート、アルバイトの勤務形態に関係なく社会保険を収めていれば権利があります。つまり旦那さんの扶養に入っていたり、自分で国民健康保険に加入している人、専業主婦で無職の人、自営業の人は残念ながら受給の対象外になります。

パート、アルバイトで働いてる人は「時給だし、フルタイムで働いてないからもらえないかも・・・」と思いがちですが、まずは自分が社会保険に加入できる条件に当てはまり、支払いしているのか確認しましょう。

パート、アルバイトでも社会保険に加入できる条件

パート、アルバイトでも社会保険に加入できる条件は、務めている会社が社会保険に加入していること、1日単位、または1ヶ月単位で正社員の4分の3以上の労働時間勤務していること、会社に雇われた時に契約期間を定められていないことです。

例えば、4時間勤務を週5日間、8時間勤務を月10日間、日雇いや3ヶ月間の臨時勤務では条件を満たしていないので入れませんね。これらの条件を満たしていれば、義務的に必ず社会保険に入らなければいけません。加入条件に当てはまり、支払っていれば受給資格がありますからね。そして出産手当金受給資格には、社会保険の加入期間は関係ありません。

しかし、これは産休後に仕事に復帰予定の場合です。退職してもらう場合には加入期間に条件がつきます。それは退職する日の前日までに継続して1年以上社会保険に加入していること。そしてさらに、退職日に出勤せず有給を取って休んでいる、あるいは産休中に退職することも条件に加わります。そして産休中の期間に働いて給料をもらったり、会社から標準報酬日額の3分の2以上もらえる人は、支給の対象外になります。

ここで出てきた標準報酬日額についてですが、次の計算方法のところで解説しているので、そちらを読んでいただくと標準報酬日額のことが分かりますよ。また例えば、会社から標準報酬日額の3分の1しかもらえないとすれば、その足りない差額分を出産手当金としてもらえます。

計算方法

では金額の算定にはどのような基準があるのか紹介していきますね。まず算定の基準になる標準報酬月額が重要です。

算定の元となる標準報酬月額

標準報酬月額とは、毎年4月から6月までの3カ月分の基本給と諸手当を合算してから1ヶ月分に平均化したもの。諸手当の中には、役職手当、住居手当、通勤手当、扶養手当等の月単位で一定額が支給される固定的賃金が含まれます。賞与いわゆるボーナスももちろん含みます。

残業手当は固定的賃金ではありませんが、働いてもらえるお金なので含まれます。結婚祝い金、出産祝い金、見舞金、退職金などの恩恵に関わるお金は含まれません。

「産休中にボーナスが出たら働いたことになって出産手当金がもらえなくなるのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、実際に仕事に行って働いて給料をもらってるわけじゃなく、決められた時期にもらえるものなので問題ないですよ。ボーナスはもらえる金額に影響するだけです。その金額を算定するには標準報酬月額を、30で割り、日割り計算して標準報酬日額を出します。

実際の計算式

ここまでを実際の計算式にすると、
標準報酬日額×3分の2×産休の日数=出産手当金
になります。

例えば、月収が15万円の場合、150,000÷30=5,000 、 5,000×3分の2×98=326,634 ということでもらえる出産手当金は326,634円ということになりますね。少数が出る場合は、小数点以下は四捨五入されます。

源泉徴収は含まれるの?

出産手当金がせっかくもらえても、源泉徴収でさらにひかれるなんてイヤですよね。でも大丈夫!出産手当金は非課税なので源泉徴収には含まれません。

多胎妊娠は計算方法が変わります

双子以上を妊娠している場合は産休の期間が変わってきます。産前の休暇が出産予定日の98日前からになるので、出産手当金でもらえる金額も変わります。

中絶、死産、帝王切開でももらえるの?早産や予定日を過ぎた場合は?

「出産」といっても残念なことですが、妊娠しても無事に赤ちゃんが産まれてこれない場合もありますよね。様々な理由で赤ちゃんを中絶したり、死産になってしまうこともあるかと思います。

この場合、出産手当金をもらえる対象になるのか?それは赤ちゃんがママのお腹の中にいた期間が重要になります。出産手当金の支給の条件は妊娠85日、つまり妊娠4ヶ月以上で支給の対象になります。

中絶や死産の場合

つまり妊娠4ヶ月の中期で中絶したとしても出産と同等に扱われ、その中絶により休息期間が必要な場合、その期間分(術後56日以内)の出産手当金がもらえます。死産の場合にも妊娠4ヶ月以上であれば、母体を休めるために必要な期間分(産前42日前~56日以内分)の出産手当金がもらえます。

帝王切開の場合

帝王切開の場合は、帝王切開の手術をした日が出産日になります。帝王切開だと、1ヶ月にかかった医療費が自己負担額を超えた場合に、超えた分を払い戻してくれる高額医療費の請求をすることができますが、この場合、もちろん出産手当金ももらえます。

早産や遅産の場合

産休に入る前に何らかの理由で早産してしまった場合、産前分の出産手当金はもらうことができず、産後分の金額しかもらえません。産休に入ってから予定日よりも早く出産した場合は、早く生まれた日数分もらえる金額が減ってしまいます。

逆に予定日を過ぎてから出産した場合(遅産)は、超過した日数分の金額が加算されます。

重要なのは実際に出産した日

このことからも分かるように、出産手当金でもらえる金額は、出産予定日から決まる産休期間分を、全部まるまるもらえるわけではありません。

産休の期間を決めるには出産予定日が重要ですが、出産手当金の金額を決めるには「出産予定日」ではなく、「実際に出産した日」が重要です。赤ちゃんが産まれる時期によって大きく変わるんです。

申請方法。いつだれがどこでするの?振込みはいつ?

産前産後はいろいろ準備や赤ちゃんのお世話で忙しいのでバタバタしがちです。妊娠が分かったら早めに出産手当金の手続きの仕方を確認し、産前に必要なものは準備しておきましょう。

申請に必要なもの

出産手当金支給申請書が必要になります。申請書はたいてい会社にありますが、ない場合は最寄りの健康保険協会か社会保険事務所、協会のホームページからでもダウンロードできます。

申請書には担当医師の証明、事業主の証明も必要です。申請期間+申請期間前1ヶ月分の給料明細とタイムカードも添付しなくてはいけません。これらは申請を分けてする時は初回のみ必要です。会社に証明を書いてもらう場合に健康保険証、母子健康手帳、振込み口座番号、印鑑などが必要になることも。

申請時期

まず申請できる期間は、産休が開始の初日ではなく2日目以降から2年以内です。産前と産後で分けて申請することもできるし、1日単位で請求することも可能です。

でも産前産後は何かと忙しいので、何回も手続きするのは現実的に大変。まとまったお金がないときや緊急に生活が苦しい時は必要ですが、ほとんどの人は産休が終わった頃に申請することが多いです。

申請場所

申請先は、管轄の全国健康保険協会になります。持参してもいいし、郵送することも可能です。しかし、会社に書類を提出すれば、会社の事務担当の職員が手続きしてくれることが多いようです。会社の担当の人に確認してみると良いでしょう。

申請できる人

申請できるのは社会保険を払っている被保険者の本人のみです。家族、配偶者はできません。

振込み時期

全国健康保険協会では申請書が届いてから通常は2~3週間程度で振込みされることになっています。しかし、書類の照会や審査に時間がかかる場合はさらに期間がのびてしまいます。

よくネットで2~3ヶ月たっても振込みされていないという事例もありますが、これは会社に提出して、会社から協会に提出するのに時間がかかってる場合もあります。あまりにも振込みが遅い時は、会社か協会に問い合わせしてみてください。

申請書の記入に不備があると、すぐ手続きができずにその分振り込みも遅れてしまうので、記入もれや不備がないかしっかり確認することが大切ですよ。

予期しない事態や手間も

「もらえるものはもらっておこう!申請すればいいだけだし。」と思っていたら予想外な展開になったり、いろいろ手間がかかる事態に発展したり・・・。このようなトラブルはできるだけ避けたいですよね。ではどのようなトラブルや手間があるのか?対策がある場合は対策も紹介しますね。

退職日の設定

会社を退職してからもらう場合は、退職日をいつにするかがとても重要です。産休前に退職してしまうと、出産手当金はまったくもらえなくなるので要注意です。事務担当の職員に出産手当金の受け取りの意思を伝えて、退職日に間違いがないようにしましょう。

退職後の加入保険

退職後は出産手当金を受給中の間、自分で国民健康保険に加入するか、社会保険を任意で継続する必要があります。しかし標準報酬日額の金額が3,611円以下だと、退職後に出産手当金を受給中でも旦那さんの扶養に入れますので、自分の標準報酬日額を確認しておきましょう。

確定申告

会社で年末調整をしないで退職した場合は、自分で確定申告を行わなければいけません。出産手当金は収入ではなく、保険から給付されるもので非課税のため申告する必要はありませんよ。そして医療費控除といって、1年間にかかった医療費の一部を税金から還付金で返還される場合もあるので、ぜひチェックしておいてください!

出産手当金の減額

出産手当金の支給中に、傷病手当金も支給される場合は、出産手当金を優先します。傷病手当金とは病気や怪我により働けなくなった時に支給される手当です。この両方の手当てを同時に受け取ることはできません。そのため傷病手当金が支給された場合、出産手当金から、傷病手当金が支給された分が減額されます。請求期間中に傷病手当金が支給済みの場合は、出産手当金が減額調整されてしまいます。

産休中の有給休暇

産休中に有給休暇を取得した場合は、標準報酬日額の全額が支払われるので、その日数分が出産手当金の支給対象となりません。退職する場合は、有給休暇は産休の前に消化すると良いですね。

帝王切開による出産予定日の変更

帝王切開の日が確定すれば、出産日も確定しますよね。帝王切開は出産予定日の2週間前くらいに行う場合が多いので、最初の出産予定日が変わり、産休の時期も早まります。

つまり、産休が早まることでもらえる出産手当金が変わって、最初の出産予定日で計算したものより、産前は2週間分多くもらうことができるんです。これは大きな金額ですよね。予定帝王切開が産休に入る2週間以上前に分かれば、医師の証明により出産予定日を変更して早めに産休に入ることが可能です。

産休中の生活費

出産手当金が支給されるまでには少なくとも2~3週間はかかるので、産休中の生活費をまるまる出産手当金で賄うには、現実的に無理があります。さらに産後に頻繁に申請するような事態になったら休める体も休まりません。

産休中はゆっくり休めるように、その間の生活費が足りなくなる可能性があるなら、今からしっかり節約して貯めておきましょう。産前産後は何かと準備するものも出てきますから、お金に余裕をもっておきましょう。

出産手当金をぜひ請求しましょう!

いかがでしたか?出産手当金の受け取りは働く女性に認められた権利なので、自分が支給対象に当てはまるか確認し、受け取りが可能な場合は請求の準備をしておきましょう。

会社を退職する場合は、仕事辞めるけど臨月まで働くことが前提なので、職場の環境や雰囲気によっては請求しずらいかもしれませんが、出産手当金の支払いをするのは会社ではなく、全国健康保険協会です。なんら気兼ねする必要はありませんよ。

これから赤ちゃんが産まれて生活のためにとても大切なお金ですから、もらえるものはしっかりもらっておきましょうね!


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