原因不明不妊とは
原因不明不妊とは、特に機能的に不妊を引き起こしている原因がはっきりしているわけではないのに、どういうわけか自然妊娠しないという不妊で、現在不妊で悩んでいる人の10%~35%程度は、妊娠したいという意思があるにもかかわらず、原因が分からずに妊娠できない状態にあります。
一般的には、健康的な男女が夫婦生活を営んでいれば、1年以内に自然妊娠すると言われていますが、不妊の場合には自然妊娠することができません。
妊娠しない理由はいろいろあり、男性側に原因がある場合と、女性側に原因がある場合と50%程度ずつとなっています。以前では不妊は女性の問題だと考えられていましたが、現在では男性側に原因のある不妊が多いことも分かっていて、夫婦そろっての検査や診察が勧められています。
原因不明不妊の原因はいろいろ考えられます。例えば、精子と卵子が受精するところまでは問題なくても、子宮の内膜と受精卵の相性が悪ければ、着床しないことがありますし、免疫異常によって着床しにくい状態を作り出してしまうことも考えられます。
また、受精卵が子宮内に着床するためには、子宮内膜がフカフカな状態でなければいけないのですが、子宮内膜の異常によって受精卵が着床できない状態だと、着床障害が起こりやすくなります。
子宮内膜症を持っていることも、原因不明不妊の原因となります。子宮内膜症とは、本来なら子宮の内側を覆っているカーペットのような役割をしている組織が子宮の外にも増えてしまう疾患で、不妊で悩む女性の80%は子宮内膜症を持っているというほど、不妊とは大きな関係がある疾患です。
また、卵巣や卵子が原因となることもあります。例えば黄体化未破裂卵胞(LUF)という疾患は、成熟して排卵されてよい状態になっている卵子なのに、排卵されないまま黄体化してしまうという疾患で、基礎体温系で体温測定をしていても見つけることができません。
また、卵子は通常は透明な膜に包まれていて、受精する際には精子がこの透明な膜を破って内側へ侵入しなければいけません。卵子によっては、この膜が精子を攻撃したり、精子が入ってこれないように阻害していることもあり、それが不妊の原因となることもあります。
その他にも、染色体の異常が原因で妊娠が成立しない場合などがありますし、受精できても受精卵が育つ過程でDNAがダメージを受けて妊娠を継続できないというケースもあります。
妊娠するにはどうしたらいいの?
原因不明不妊の場合には、はっきりとした不妊の原因が分からないため、不妊治療を受けるカップルにとっては精神的な苦痛を強いられることが多くなります。
タイミング法などを繰り返すことで自然妊娠にトライすれば妊娠できるのか、疾患を治療すれば妊娠できるのか、そうした期待を持ちながら夫婦はそれぞれ必要な検査を行いながら、不妊の原因を探らなければいけません。
自然妊娠が難しい場合には、まず最初に卵管造影検査(HSG)を行い、卵巣から正常に卵管を通って卵子が子宮まで到達できる環境にあるのかどうかを検査します。
それで異常が認められなければ、排卵促進剤を使って卵巣を刺激し、タイミング法及び人工授精による不妊治療へと進むことになります。
妊娠は自然妊娠を望む場合でも、年齢的なタイムリミットがあるため、カップルの年齢を考えながら、どのぐらいの期間どんな治療を続けるかをケースバイケースで決めていくことになります。
原因不明不妊の原因を特定する検査の一つに、腹腔鏡検査があります。一般的な不妊検査で異常が見つからない場合でも、腹腔鏡検査をすると55%程度は何かしらの異常が見つかるという優秀な検査で、近年ではこの検査を勧める医師が増えています。
また、はっきりとした原因が見つからなかった場合でも、腹腔鏡検査をした後の妊娠率が、なんと45%という高い数字であることは、腹腔鏡検査が何かしら妊娠にプラスの影響を与えていると考えられるのではないでしょうか。
この検査は、不妊の原因を特定するための検査という位置づけで行われていますが、その後の妊娠率が高いことから、治療の一環として行うこともできます。
もしも不妊で悩んでいる女性なら、人工授精や体外受精に進む前に、一度試してみて損はない検査・治療法でしょう。
原因不明不妊の究極の治療法と言えば、人工授精や体外受精です。
これは、夫婦から採取した卵子と精子を体外で受精させ、受精したことを確認してから子宮の中に戻すという妊娠方法です。健康保険が適用されないのでコスト的に高くなりますし、年齢が上がると成功率が低下してしまうため、この方法をすれば必ず妊娠するというわけではありません。
しかし自然妊娠が難しいカップルにとっては、選択肢の一つとして考慮してみてはいかがでしょうか。原因不明不妊の治療は長い道のりになることが多いものです。夫婦で楽しみながら乗り越えるつもりで取り組みたいですね。