体外受精は、人工授精でも授かれないときの不妊治療です。国や自治体の補助があるとはいえ、費用はグンと高くなるのでそうそう何度もトライするのは困難。
ここでは、不妊治療の最後の砦といわれている体外受精をこれから検討するご夫婦に向けて、治療の概要を紹介します。
体外受精の概要
体外受精とは、卵子を外に取り出して、ご主人の精子と一緒にして受精卵にしたのち、その受精卵を女性のからだに挿入する妊娠方法です。精子を膣内に注入して妊娠を促す人工授精と違い、体外受精では体の外で受精卵へ成長させてから、女性のからだに挿入し、妊娠を促します。
体外受精に移行するのはこんなとき
では、どういった場合に体外受精を行うことになるのでしょうか。
ひとつは、タイミング療法や人工授精で妊娠することができなかった場合です。不妊治療のステップアップとして、体外受精が行われることになります。
もうひとつは、そもそも体外受精でしか妊娠することができない場合です。不妊治療を行う前提として、どうして妊娠しにくいのかまず検査を行います。その検査の結果、体外受精でしか妊娠することができないという場合に、はじめから体外受精という治療が行われます。
体外受精ができる4つの条件
体外受精を行うには、4つの条件を満たしていることが必要となります。
- 妊娠を邪魔する疾患などの異常が、卵管以外で起きていない
- 卵子を受精することのできる状態まで成長させる機能が正常である
- 女性ホルモンが正常に機能している
- 法律的に配偶者として認められている男性の精子の使用ができる
これらの条件を満たしており、体外受精の他に妊娠することが難しい場合にのみ、体外受精の治療が行われることになります。
体外受精のスケジュール
体外受精のスケジュールは、おおよそ次のとおりです。
生理開始から2~3日目
来院し、投薬(排卵誘発剤を投与または内服液)して、卵胞を育てます。場合によっては投薬しないことも。投薬なしなら1個の卵子を取り出すことになりますが、誘発剤などを使った場合には、複数個の卵子を取り出すことができます。
誘発剤を投与後は、定期的に通院して卵子を取り出す日を決めます。そのつど、卵子の成長具合を超音波で確認し、卵胞が18ミリメートルまで成長する日以降が採卵日となります。
生理開始から10~14日目
卵子を取り出す日です。卵子を取り出す専用の針と器具を膣内に挿入し、卵巣に刺して卵子を取り出します。
この際、卵胞液も一緒に取り出します。卵子を取り出す日に、ご主人の精子も取り出し、培養液を入れたシャーレの中に体外に取り出した卵子と精子を一緒に入れ、受精をさせます。
採卵から2~5日目
受精卵を子宮内に移植します。この際、受精卵が着床しやすい環境をつくるために、すぐに体内に挿入することはせず、一旦受精卵を凍結させ、次の生理周期の排卵後に融解してから受精卵を体内に挿入する方法もあります。
着床を促すための内服薬が処方されるので自宅で飲みましょう。妊娠判定日までに2~3回来院して、着床を助ける注射を打つこともあります。
採卵から14~17日目
妊娠判定です。無事妊娠してますように♪
体外受精と採卵。痛みはあるの?
体外受精を行う際、卵巣から卵子を取り出さなければならないので、女性にとってその際に痛みを伴うのかどうかが不安なところです。
卵子を取り出す方法としては、卵子を取り出すための専用の針を経膣超音波装置を使って膣内に挿入し、卵巣にさします。そして卵胞を吸引し、卵子を取り出します。
卵子を取り出す技術や経験は、病院によって異なることや、人によって子宮の形なども微妙に違うことなどから、痛みを感じるかどうかは場合によって様々です。
しかし、ほとんどの場合に痛みは感じません。痛みが不安な場合には、麻酔を打ってもらうこともできるので、担当医に相談するようにしましょう。
また、卵子は何個取り出すのかという疑問が沸きますが、それは排卵方法によって異なります。通常の排卵である完全自然排卵で排卵する場合、取り出される卵子は1個です。しかし、その他様々な排卵誘発剤を使った場合には、最多で20個前後の卵子が取り出されることがあります。
からだの外へ取り出された卵子は、精子と結びつけなければなりません。ご主人は、自宅か病院でマスターベーションを行い、精子を準備します。そして、その精子と卵子を一緒の容器に入れ、受精卵になるように培養します。
体外受精の妊娠確率や費用はどのくらい?
ここまで紹介した通り、体外受精は通院だけでもかなりの回数です。そうなると気になるのは費用と労力に見合うだけの妊娠率があるかどうかですよね。
妊娠できる確率はどのくらい?
まず、体外受精で妊娠できる確率は、総合的に20~40%ほどです。夫婦の年齢などの身体的条件や、体外受精を行う病院(の技量)によって確率は前後します。さらに、受精卵を子宮内に挿入する方法(分割期胚移植・胚盤胞移植・二段階移植・SEET移植)によっても確率は異なります。
※4つの移植方法は後述します。
体外受精の費用
体外受精は、保険が適用されない治療ですから個人で全額負担することになります。
排卵誘発剤の使用の有無や、受精卵を子宮内に挿入する方法としてどの方法を選択するのかによって金額は変動し、1回の体外受精で10万円から100万円です。
1回で妊娠することもありますが、だいたい3回から5回を目処に行われるので、30万円から500万円の費用がかかります。
妊娠確率がアップする受精卵の移植について
受精卵を子宮内に挿入する方法としては、4つの方法があります。
1つ目は、受精をしてから2日から3日後の受精卵を子宮内に挿入する分割期胚移植という方法です。
2つ目は、受精してから5日から6日の受精卵を子宮内に挿入する胚盤胞移植という方法です。
3つ目は、分割期胚移植と胚盤胞移植を併用する二段階移植です。
4つ目は、受精卵の培養液と胚盤胞を使って受精卵を子宮内に挿入するSEET移植という方法です。
中でも、二段階移植とSEET移植は、妊娠する確率が高いといわれています。
体外受精のまとめ
体外受精はかなり高額な治療となります。また、体外受精を行ったからといって必ず妊娠することができるわけではないので、治療をどうしていくのか、経済的に大丈夫なのかどうか夫婦でよく話し合うことが大切です。