妊娠高血圧症候群とは
妊娠中毒症と呼ばれることが多い妊娠高血圧症候群は、妊娠期間中に血圧が高くなりすぎてしまう疾患です。
妊娠高血圧症候群は大きく分けて2種類があり、妊娠中に血圧だけが高くなる場合には妊娠高血圧症と呼ばれ、高血圧になるのと同時に尿からたんぱくが出てしまう場合には、妊娠高血圧腎症に分類されます。
血圧は体質的に高めの人もいれば低めの人もいますが、妊娠高血圧症候群と診断されるのは、低い値が90mmHG以上、高い値が140mmHG以上となった場合です。
蛋白尿が出ている場合には、1日当たりたんぱくが0.3g以上出てしまうと、妊娠高血圧症候群と診断されます。
妊娠高血圧症候群は、20人に1人の妊婦さんがかかる疾患で、一般的には妊娠32週を超えた妊婦さんに多く起こります。放置すると症状は進行し、母子ともに危険なので早期治療が必要となる病気です。
放置した場合、母体の血圧はどんどん高くなり、ひどくなると脳出血やけいれん発作、肝臓や腎臓などの機能障害、それに伴って溶血や血小板減少などHELLP症候群を引き起こしてしまうリスクがあります。
お腹の中の胎児の場合には、発育不全となってしまったり、胎盤が子宮の壁からはがれてしまって胎児に十分な酸素が届かなくなってしまう胎盤早期剥離などが起こりやすくなります。
場合によっては胎児の死亡という事態にもなりかねないため、妊娠中には妊娠高血圧症候群にかからないようにくれぐれも注意する必要があります。
症状の現れ方・自覚症状
妊娠高血圧症候群にかかると、まず母体の血圧が高くなるので、定期的に妊婦検診を受けている人ならその時に見つけることができます。
また、皮膚がむくみやすくなり、足首の部分の皮膚を指で押すと、皮膚が凹んだままなかなか戻らないという症状が起こるようになります。妊婦検診では、どちらの検査も毎回行うので、その時に発見することが可能です。
妊娠高血圧症候群は、もともと血圧が高めの人や糖尿病や腎臓系疾患を持っている人は体質的にかかりやすいと言えるでしょう。
それ以外にも、妊婦さんの年齢が40代以上と高齢妊娠だったり、太りすぎの肥満体型だったり、妊娠中に体重が増えすぎてしまった人などは、ハイリスクとなります。
予防と治療法
妊娠高血圧症候群の原因ははっきりと分かっていないため、完全に予防することはできません。
研究によると、母体の体質的な問題で胎児へ栄養や酸素を送るための胎盤が上手く作られず、その胎盤が異常物質を作り出して母体の血液へと流しこんでいるため、妊娠高血圧症候群が起こるのではないかと言われています。
そのため、体質によってはどんなに気を付けても予防出来ないことはありますが、多くの妊婦さんは、普段の食生活や生活習慣に気を付けることによって予防することができます。
妊娠高血圧症候群だと診断されると、基本的には母体と胎児の安全のために入院治療が行われます。
治療中は絶対安静で、血圧をコントロールする薬を飲みながらの治療となりますが、薬によって血圧を急に下げてしまうことは胎児にとってはマイナスとなってしまうので、医師による血圧管理が必要不可欠となるのです。
そして、入院治療を受けながら、出産できるタイミングまで妊娠を継続させ、できるだけ早くに妊娠を終わらせることが、妊娠高血圧症候群の根本的な治療となります。
妊娠高血圧症候群と診断されたわけではないけれど予備軍だという妊婦さんは、自宅での食事療法が勧められます。血圧を高くするような食べ物はNGとなり、塩分は禁止、そして食べすぎもNGとなります。
自宅での治療の場合には、お薬を処方してもらう事ができるので、それを飲みながらの治療となります。血液中の塩分を早く排出しようと水分を過剰に摂取する妊婦さんがいますが、自宅での治療においても具体的にどんな方法で対処すればよいのかは、医師に相談しながら実践してくださいね。
将来の疾病の危険性は?
妊娠高血圧症候群は、胎盤が原因で発症しているものなら出産して胎盤を排出すれば、自然と症状が良くなります。
しかし、重度の妊娠高血圧症候群だったり、もともと高血圧の家系や体質の人、また高齢出産の人にとっては、出産した後でも後遺症が残ってしまう可能性があります。
高血圧が出産後にもずっと続いてしまったり、蛋白尿が出続けるという症状が続いた場合には、出産後に治療を続けることになります。
産後にも妊娠高血圧症候群の症状が残ってしまうことは特別な例外というわけではないため、出産の際に医師からお薬を出してもらう事はできますが、もしも産後3か月たっても症状がなくならない場合には、精密検査を受けて別の疾患の可能性を疑うことが必要です。
また、妊娠高血圧症候群にかかったら、次の子供を妊娠した時に妊娠高血圧症候群を発症するリスクは通常の2倍となります。
そのため、一度かかった経験がある人は、普段から食生活には注意をして、血圧の管理をしながら次の妊娠を迎えることが必要ですね。